いつからこうなってしまったのだろう

今日もだらだらと仕事へ行く。 ハンドルを握って生活費を稼ぐ時間だ。

タクシーに乗り始めた頃のキラキラした感覚はない。

作業として乗りたい人がいる場所に空車を持っていく。

次々とゲーム感覚でお客様を乗せていたあの日は帰ってこない。

車をできるだけ揺らさないように道路のデコボコを見つめて運転するだけだ。

他の車を刺激しないように適度に車間距離を空けて、定番ルートを徘徊するいつもの行動。

前で取られても、いちいち気にしていてはメンタルが持たない。

いかりや長介さんのようにダメだこりゃ、はい次行ってみよう、次~で気持ちを入れ替えるのだ。

仕事中は不当行為を出来るだけしないように心がけている。

割り込んでお客様を取るなんて論外だ。自分の運転で他の車に不快な思いをさせると何かと面倒くさい。

魚釣りのようにルールやマナーがあればいいのだけど、道路上には常識がない。

なるべく距離をとって釣りをする、他人の釣りを邪魔しないように、そんな意識を持った同業者が少なくてさもしい行為に度々出くわす。

せめて悪者の当事者にならないように今日も穏やかに繰り返し運転するだけだ。早く家に帰りたい。

世の中に自分のやりたい仕事に就いた人はどれ程の割合なんだろう。

独り言のように頭の中で考え事をしてはメーターが積み重なり時間が過ぎてゆく。

一時間四千円のペースなら上出来、三千円ならまずまず、千五百円以下なら、何でハンドルを握る仕事に就いているのだろうと過去を振り返る。

何回乗せた、どこまで行った、売上は、時間効率は、そんな話はどうでもよくなってしまう。

介護タクシーをしているときは楽しかった。利用者さんに感謝されていることがダイレクトに伝わった。

今はどうだろう。目的地が聞き取れないボソボソ声のお客様、後ろで終始いちゃついているお姉さんとサラリーマン、しゃっくりとあくびとゲップを繰り返す泥酔者を乗せる日常風景。

トラブルはゴメンだ。出来るだけ個性を出さず、無になって目的地まで黒子になった気分で運転する。

うしろの車に信号待ちでクラクションを鳴らされないように交差する道路の信号を注視する日々。

これが私の仕事だ。締め日までトラブルがないように適当なところで帰ろう。